中性点クランプ(NPC)インバータ

PLECSのデモモデルに含まれている、この事例では、中性点クランプ(NPC)3レベル電圧形インバータ(VSI)をモデリングしています。中性点クランプ(NPC)トポロジーは、従来の2レベルVSIと比べて高調波を低減するため大電力用途に適用される場合が多いです。また、この例題に実装されている制御ロジックは、パワー半導体スイッチの損失を最小限に抑えます。このモデルでは、動的に変化する直流電源を変換し、「50Hz、130V(実効値)」の電力系統へ電力を供給します。

電源回路

主回路モデルは、3つのレッグと、各相に2つの直列接続ハイサイド/ローサイド・スイッチが配置された、双方向3レベル電圧形インバータ(VSI)です。通常、NPCコンバータ用のスイッチとして、逆並列ダイオードとIGBTの組み合わせが多く採用されますが、2象限スイッチの組み合わせも適用可能です。この例題の回路トポロジーでは、NPCインバータの各レッグに、PLECSのライブラリに格納されている「3レベルIGBTハーフブリッジ・パワーモジュール」ブロックを使用しています。このパワーモジュールブロックの内部は、パワー半導体を理想スイッチでモデリングしたサブシステムと、制御電圧/電流を適用し平均化したサブシステムによって構成されています。平均化されたサブシステムは、ハードウェア・イン・ザ・ループ(HIL)等の、リアルタイム・シミュレーションでの利用に適しています。

直流電源は、PVインバータに電力を供給するPVパネルを模して、可変電流源を用いてモデリングされます。入力される太陽エネルギーの急激な変化に対応するため、電源はシミュレーション前半で直流「10A」を出力し、後半では直流「15A」を出力します。電源から入力される電流は、3相IGBTの各レッグ中性点と直列接続し、2つに分割されたキャパシタによって構成されるDCバスを充電します。クランプ・ダイオードは、キャパシタの中性点と、各レッグのハイサイド/ローサイド・スイッチとの中間接続点に配置されています。各レッグの中性点は、インダクタを介して、電力系統の交流各相に接続されます。電力系統は、「50Hz、130V(実効値)」で動作する理想的な3相電圧源を用いてモデリングされます。DCバスのキャパシタには初期電圧「200V(直流)」が設定されていますが、DCバスの電圧指令値は、「450V(直流)」となっているため、シミュレーション開始時に、キャパシタが充電されます。

制御ロジック

外側に配置された電圧制御ブロックにはPI制御器が実装されており、dq電流制御ブロックで参照する電流指令値を出力します。電圧制御器は、主回路の直流電圧を検出し、電圧指令値「450V(直流)」との誤差を算出します。電流制御器は、参照信号「Vdq」を出力するために、id、iqに対し、個別にPI制御器を実装しています。主回路から検出される交流電圧/電流は、電流制御器で参照されます。位相同期回路(PLL)は、3相座標(abc)から回転座標(dq)へ変換する際に参照する位相角を出力します。電流センサーの検出帯域に対応するため、検出された3相電流(abc)のフィードバック経路上にローパスフィルタが配置されます。各スイッチを駆動する変調指数は、3相の各レッグに対し、それぞれ異なる変調器から出力されます。

シミュレーション

シミュレーション開始後に、直流電圧出力が「450V」となるよう制御されます。PVアレイから発生する電流外乱は、シミュレーション開始50ミリ秒後に入力されます。スイッチングパターンは、位相がシフトした波形の3レベル・パルス列を示しています。有効/無効電力(P、Q)が系統に供給されることも確認できます。