電動車両(2軸)を用いたドライビング・プロファイルのシミュレート

PLECSのデモモデルに含まれている、この事例では、前輪駆動の電動車両(2軸)をモデリングし、機械/回生ブレーキモード条件によるドライビング・プロファイル(駆動グラフ)をシミュレートします。異なるトルク指定条件における車速および重量配分の影響を確認します。

システムモデル

電動モータは、2軸車両モデル前輪の車軸に接続されます。固定された慣性の回転体としてモデリングされ、理想的なトルクソースを用いて、モータの回転子にトルクが入力されます。回転子のシャフトはギアボックスを介して、車軸に接続されます。シャフトの剛性及び減衰は、それぞれ、トーションバネ及び回転ダンパーを用いてモデリングされます。

前/後輪で発生する全駆動力(トラクション)は、集中質量としてモデリングされ、車両に適用されます。転がり摩擦ブロックは、前/後輪ブレーキをモデリングするために使用されます。 車両モデルは、車軸に入力されるトルクを、「すべり(Slip-based)」を考慮した車輪モデルを実装した車両の駆動力へ変換します。車両モデルは並進運動ポートを介した走行負荷も考慮されています。

車両モデル

車重は、車両の重心位置に応じて、前/後輪の車軸で分散されます。この例題では、重心位置をフロント・エンジン車両をモデリングするため、重心位置は前輪の近くに仮定しています。車輪モデルは、車軸に入力されるトルクを、駆動力へ変換します。前/後輪で発生する駆動力は、集中質量として、車両に適用されます。車両モデルには、加減速の影響を考慮した車両の重量分布も適用されます。「Pitch Change Delay」ブロックは、車両のサスペンション・システムの剛性をモデリングするために使用しています。

車輪モデル

車軸に入力されるトルクは、回転運動慣性ブロックを用いて、集中質量でモデリングした車輪を駆動します。車輪の回転速度と、車両の移動速度(vs)を測定します。路面との接点付近のタイヤ並進速度(vm)を算出するため、車輪の回転速度は、車輪の半径によってスケーリングされます。車軸の軸力と測定された速度(vsおよびvm)は、車輪を介して車両に入力される駆動力(Ft)を算出する際に参照されます。車両システムは入力される駆動力によって動作します。

車輪モデルには、タイヤのすべりを算出するため、2つの手法が実装されています。「制限あり完全非線形モデル:Restricted Fully Nonlinear Model」は、車輪へ入力されるトルクが、ステップ的に変化する際に発生する回転振動の影響によるタイヤ/車輪の過渡応答を考慮しますが、「ベーシック・タイヤ・モデル:Basic Tire Model」では、この過渡応答は考慮されません。

シミュレーション

ドライビング・プロファイル(駆動グラフ)

上図は、シミュレーション中に、車両システムに搭載された電動モータから入力されるトルクを示しています。シミュレーション開始から100秒まで、加速のトルク勾配が指定されます。シミュレーション時間100秒では、電動機からステップ的に入力される急激なトルク変化によって、車両が突然、加速します。シミュレーション時間200秒では、運転者が機械ブレーキを操作して車両が減速するため、電動モータからの入力トルクは「0」になります。シミュレーション時間300秒では、車両を後進させるため、電動モータから負のトルクが入力されます。このトルク条件は、機械ブレーキによって、車両が静止されるまでの150秒間、継続します。他にも、電動モータが必要とする電力(W)もプロットされています。上図より、与えられた運転状態では、車両モデルに実装された電動機は、モータモードのみで動作することが確認できます。車両に対する各トルク条件における車速および重量配分の影響が簡単に検証することが可能です。

回生ブレーキ

機械ブレーキを備えた車両を減速する、別の手法として、車両システムに搭載された電動モータに運動エネルギーを入力して、発電機として電力を生成する回生機能を利用することが挙げられます。本例題には回生モードで動作するドライビング・プロファイル(駆動グラフ)も実装されています。